記憶は確かではないけれど、小さいときに『幻の馬』という映画を見た覚えがある。
強い馬で連戦連勝を重ねていくが、破傷風で死んでしまう悲運の幻の三冠馬、という思いだけが残っていた。
研ぎ澄まされた馬体と大きな黒い瞳、そしてそれぞれの馬にそれぞれのドラマ、だから僕はサラブレッドが好きだ。
競馬の馬券は買わないけれど、彼らを見るのは好きで新冠や静内の牧場に何度も尋ねていった。
短い季節を駆け抜けていった遥かなる優駿・・・これはその記録です。


『幻の馬』
トキノミノルは無敗で皐月賞、日本ダービーを圧勝、菊花賞も間違いなしと思われていたが、ダービーを制したわずか17日後に破傷風でこの世を去った。三冠馬になれず「幻の名馬」と呼ばれた。

「初出走以来10戦10勝、目指すダービーに勝って忽然と死んでいったが、あれはダービーをとるために生まれてきた幻の馬だ」
作家の吉屋信子さんがトキノミノルの急死後、新聞に寄せた文章の一部である。